長野高専「エンジニアリングデザイン実践」外部サポート
2026年度 4年生 ガイダンス ─ 株式会社みみずや
テーマ(企業)選びを「技術」ではなく「あり方」から考える90分
OBとして、ひとつの「生き方」をお見せします
代表取締役 社長 / 長野高専 卒業生
1994年生まれ、大町市出身。
自然の中で育ち、水やエネルギーに興味を持ち高専へ。サッカー部で滝澤と出会う。
発電所・変電所向けの機器開発に従事。
出世と業務効率ばかりを考える日々。
台風被害のボランティアで長野に戻る。
自分が関わった設備が水没し壊されている光景。
「相手の顔が見えないモノづくり」への疑問。
飯綱町で農業と廃校活用に飛び込む。
ボランティアで長野に戻ったら、
私が関わった設備が水没し、
一瞬で壊されている光景を
目の当たりにした。
無力さを感じると同時に、
相手の顔が見えないモノづくりを
続けることへの疑問が湧いてきた。
── 2019年の台風災害を振り返って
代表取締役 副社長 / 長野高専 卒業生(→ 信州大学 繊維学部)
1995年生まれ、上田市出身。
ドラえもんみたいなロボットを作りたくて高専へ。
中條とは寮の同じフロア。サッカー部の先輩後輩。
「一体のロボットには果てしない時間がかかる」
→ 人の生活に密接な素材の世界へ。
在学中にI.D.D.WORKSでインターン開始。
農家さんの畑で生のとうもろこしを初めて食べる。
「こんな素晴らしいものが地元にあるのに、
なぜ『仕事がない』と言って去るんだろう?」
「地域に仕事がない」は固定観念だと気づく。
「ドラえもんを作りたい」の根っこは、
「人の暮らしの役に立つ
何かを作りたい」という思い。
同期の多くは都市部や大きな会社に
就職していった。
「将来は長野で楽しく暮らしたいけど、
今は…」という葛藤を抱える人が
少なからず存在している。
── SHINKIインタビューより
高専のサッカー部で先輩後輩。寮の同じフロアで生活。お祭りの企画を一緒にし、先輩後輩というよりは仕事仲間みたいな付き合い方。
中條が仕事にモヤモヤを抱えていると聞き、滝澤が飯綱町の事業に誘う。
「優秀な高専の卒業生が長野を離れて自分の仕事にモヤモヤしている状況にずっと違和感があった」
会社の方向性と自分たちの軸に違いが明確に。
「今を逃したらまた一年別の仕事に追われる」
→ 2022年2月、株式会社みみずや設立。
農地がどんどん廃れていく光景や、
年配の農家さんが体力的に
農業を続けられなくなっている姿を見て、
「自分たちが動かなければ、
このまま何も変わらない」
という危機感があった。
── 中條翔太
キャリアは違っても、
「地域を豊かにしたい」というWHYが同じだった。
テーマを提供する企業でも
成績をつける先生でもない
お互いの「言語」や「文化」の違いを
つなぐ橋渡し役
テーマ選び・班決めの前に、「企業をどう見るか」について一緒に考えましょう。
長野県飯綱町を拠点に、
農業・施設運営・地域連携を展開。
「この畑、どうしたらいい?」
「廃校、もったいなくない?」
── そんな地域の相談から事業が生まれる。
【素直に生き、豊かさを紡いでいく】
環境に適応するのではなく、環境を構築する。
この土地と、この社会の「土壌」をつくっていく。
NAO's FARM(なおもろこし)、有機農業、農業資材の販売。遊休農地を耕し、多様な人との「コラボファーム」を展開。
廃校フィットネスSent.、ホクト飯綱保養所(標高1,000m)。心と体をリフレッシュできる「場」。
デジタル教育、自然体験、企業研修、若者会議 ── 行政と住民をつなぎ、地域全体の循環をつくる。
農業も、フィットネスも、保養所も、プログラミング教育も。
目の前の課題に、自分たちの手で応え続けてきた結果がこれです。
高専を出た僕らが、
なぜ会社に「みみず」の名を冠したのか。
みみずは、暗い土の中にいる地味な生き物。
でも、土を食べ、土そのものを変えていく。
そして変わった土が、
次の命を育てる足場になる。
生物学ではこれを
「ニッチ構築」と呼びます。
環境に「適応する」のではなく、
自ら動いて「環境そのものを創る」。
与えられた条件でただ作業をこなすのか、
自らの創意工夫で、足元の土壌を変えるのか。
みみずの生き方は、
僕らが目指す「エンジニアとしての在り方」
に激しく共鳴しました。
── 華やかじゃなくていい。静かに、確実に。
この生き方こそが、僕らが心から共鳴した「WHY」であり、
人生をかけるに値する「良いテーマ」だったのです。
この授業の名前は「エンジニアリングデザイン実践」。
その意味を、まず整理させてください。
決められた手順を、
正確に再現する人。
マニュアル通りに動く。
それはそれで大切な仕事。
正解がないところに、
自分で問いを立て、
創意工夫で道をつくる人。
限られた予算、限られた時間。
その中で最大の価値を生み出す。
テーマ選びの段階から、
すでにエンジニアリングは
始まっている。
何を作るかの前に、
「なぜ」を自分で掴みにいく。
いいテーマって、
自分の技術が活かせるテーマ?
有名な会社のテーマ?
なんとなく面白そうなテーマ?
── それも大事かもしれない。
でも、エンジニアとして選ぶなら、
もうひとつ基準がある。
「なぜ、それをやるのか?」
「なんのために、その技術を用いるのか?」
そこに明確なビジョン(WHY)があること。
そして、そのビジョンに
あなたが共感できることが大事。
── タイトルでもある「WHYから始める」とは、
まさにこの基準でテーマを選ぶということです。
ANTOINE DE SAINT-EXUPÉRY
──『星の王子さま』著者
プログラミング言語、センサー、機械加工
= HOW(技術・手段)
「〇〇の開発」「〇〇のシステム化」
= WHAT(テーマ・成果物)
解決したい社会課題、創りたい未来
= WHY(ビジョン・理念)
「近赤外光センサーでAI解析するらしい。筐体設計もあるのか。
技術的に面白そう。」
「元々は医療用の非破壊検査の会社だ。長野の農家の負担に気づいて、
自社の技術を農業の救済に横展開しようとしている。」
「とうもろこし作ったり、廃校でジムやったり、
よくわからない会社だな。」
「全部『この土地の土壌をつくる』という理念でつながっている。
自分らしく生きられる長野をつくる、という海に向かっているんだ。」
企業のWebサイトを開いたら、製品ページ(木)よりも先に、
この4つのページを読み解いてみてください。
この会社はどんな未来を描いているのか?
なぜそのミッションを掲げたのか?
→ 企業の目指す目的地(海)の輪郭が見える。
「なぜこの会社を創ったのか?」
「どんな社会課題に憤りを感じているか?」
→ ここに企業の原体験(熱源)がある。
最初から今の製品を作っていたか?
どんな困難を乗り越えてきたか?
→ 事業の変遷に企業の信念が現れる。
どんな仲間と、
どんな未来を作りたいのか?
→ 顧客向けより仲間向けの本音が聞ける。
── もうひとつ、大事な話をさせてください。
今回、テーマごとに
予算 35,000円
があります。
これは何か?
「材料費」── つまり原価の一部です。
もしこれを「仕事」にするなら…
その成果物にいくらの値段をつけるか。
それはあなたたちが決めることです。
35,000円の材料で作ったものを
50,000円で売るのか、100,000円で売るのか。
その差額=あなた方の価値であり、
技術者が明日も生きていくための原資になります。
※画像は後日差し替えます
「材料費だけ」をコストだと錯覚する。
自分の「時間や知恵の価値」を計算に入れるのを忘れない。
「高度な技術・ハイスペック=良いもの」の誤認。
「作りたいエゴ」と「客が求めるもの」のズレに気づくか。
技術者は「品質」、営業は「安さ」、経営は「利益」を求める。
この複雑なリアルの中で「自分たちはどうするか?」を
決断していくのが、技術者の本当の仕事。
── これがなければ走る方向がわからない
── これがなければ走り続けられない
皆さんに渡される35,000円は、
企業が皆さんの可能性に賭けた投資。
この材料費に、あなた方の知恵と工夫を載せて、
どれだけの価値を生み出せるか。
それがエンジニアリングデザインであり、
社会で生きていくための基本的なルールです。
次のワークで、自分の手で調べてみてください。
惹かれる企業の「あり方」を掘り下げる
提示された企業テーマの中から、
直感で「惹かれる」企業を1つ〜2つ選ぶ。
選んだ企業のWebサイトを調べる。
そして、ワークシート(3つの問い)を埋める。
💡 マインドセット:
あなたは学生ではなく、
その企業の熱烈なファン(代弁者)になったつもりで。
テーマの裏にある「WHY」を探してください
この企業は何のために?
WHY
大切にしている価値観は?
VALUE
誰を幸せにしたい?
WHO
幾何学的なルールで、異なる視点と強制的に交わる
自分と全く異なる学科の思考に触れるため、以下のルールで機械的に移動・ペアリング(着席)を繰り返します。
※ 迷った時は近くの人と。気まずさを排除するため無条件でペアを組みます。
相手の「WHY」を
最後まで聴いてから話す。
否定しない。
「それ、いいね!」と
思えるポイントを
見つけてフィードバック。
違う学科だからこそ
見える景色がある。
それが1年間の強みになる。
文化や専門が違っても、ビジョン(WHY)の部分では対話ができ、共鳴し合える。
その企業の一員になったつもりで、想いを語ってください
話すこと
「この企業は、こんな想いで
社会に向き合っています」
話さないこと
「IoTセンサーで温度を…」
「機械学習のモデルが…」
「共通のWHY」という看板のもとへ移動する
多様な価値観に触れ、議論を深めた今。
あなたが最も「1年間の人生をかけたい」と
感じた企業(テーマ)はどれですか?
教室に掲示された
決意した企業の「看板」の前に立ってください。
看板の前に集まったメンバーたち。
学科や得意分野はバラバラかもしれません。
しかし、「共有するWHY(海)」は同じです。
これこそが、社会で最も推進力を持つチームの姿です。
※画像は後日差し替えます
この1年間と、その先のキャリアへ
テーマの裏にある「なぜこの企業は存在するのか?」を自分の手で調べた。
技術や仕様ではなく、ビジョン(想い)で語り合い、共鳴できるポイントを探した。
違う学科の人と初めて話し、「違い」から新しい視点を得た。
4年生の皆さんは、これから
就職や進学という
大きな進路選択を迎えます。
その時 ──
「自分の技術が活かせるか」
だけで選ばないでください。
その企業の存在理由(WHY)に、
自分は心から
共感・共鳴できるか?
共鳴できる相手となら、
困難な課題にも1年間、
社会人になってからも、
情熱を持って立ち向かえる。
FROM YOUR SENPAI
── 長野高専の後輩たちへ
ご清聴ありがとうございました
株式会社みみずや ─ 長野県上水内郡飯綱町川上1535 いいづなコネクトWEST-108
✉️ info@mimizuya.co.jp ─ https://mimizuya.co.jp