長野高専「エンジニアリングデザイン実践」外部サポート
2026年度 4年生 ガイダンス ─ 株式会社みみずや
テーマ(企業)選びを「技術」ではなく「あり方」から考える90分
ひとつの「事例」を共有します
SHOTA NAKAJO
代表取締役 社長 / 長野高専 卒業生
「相手の顔が見えないモノづくりを続けることへの、疑問が湧いてきた。」
── 2019年の台風災害ボランティアで無力さを感じて
自然の中で育ち、水やエネルギーに関心を持ち高専へ。サッカー部で滝澤と出会う。
発電所・変電所向けの機器開発に従事。出世と業務効率ばかりを考える日々。
ボランティアで長野に戻る。自分が関わった重電設備が水没し壊されている光景を目の当たりにする。
長野へ戻り、飯綱町で農業と廃校活用という「顔の見える」事業へ飛び込む。
HIROKI TAKIZAWA
代表取締役 副社長 / 長野高専 卒業生(→信州大学)
「『ドラえもんを作りたい』の根っこに、『人の暮らしの役に立つ何かを作りたい』という思いがあることに気づいた。同期の多くは都市部に就職したが、『本当は長野で楽しく暮らしたい』という葛藤を抱える人の存在を感じていた。」
── SHINKIインタビューより
ドラえもんみたいなロボットを作りたくて高専へ。中條とは寮の同じフロア。サッカー部の先輩後輩。
「一体のロボットを作るのには果てしない時間がかかる」→ 人の生活に密接な素材の世界へ。在学中にインターン開始。
農家さんの畑で生のとうもろこしを初めて食べる。「こんな素晴らしいものが地元にあるのに、なぜ『仕事がない』と言って去るんだろう?」
「長野には仕事がない」は固定観念だと気づき、地域の可能性を引き出す会社へ。
高専のサッカー部で先輩後輩。寮の同じフロアで生活。お祭りの企画を一緒にし、先輩後輩というよりは仕事仲間みたいな付き合い方。
中條が仕事にモヤモヤを抱えていると聞き、滝澤が飯綱町の事業に誘う。
「優秀な高専の卒業生が長野を離れて自分の仕事にモヤモヤしている状況にずっと違和感があった」
所属する会社の方向性と自分たちの軸に違いが明確に。
→ 2022年2月、株式会社みみずや設立。
農地がどんどん廃れていく光景や、
年配の農家さんが体力的に
農業を続けられなくなっている姿を見て、
「自分たちが動かなければ、
このまま何も変わらない」
という危機感があった。
── 中條翔太
キャリアは違っても、
「地域を豊かにしたい」というWHYが同じだった。
テーマを提供する企業でも
成績をつける先生でもない
お互いの「言語」や「文化」の違いを
つなぐ橋渡し役
テーマ選び・班決めの前に、「企業をどう見るか」について一緒に考えましょう。
長野県飯綱町を拠点に、
農業・施設運営・地域連携を展開。
「この畑、どうしたらいい?」
「廃校、もったいなくない?」
── そんな地域の相談から事業が生まれる。
【素直に生き、豊かさを紡いでいく】
環境に適応するのではなく、環境を構築する。
この土地と、この社会の「土壌」をつくっていく。
NAO's FARM(なおもろこし)、有機農業、農業資材の販売。遊休農地を耕し、多様な人との「コラボファーム」を展開。
廃校フィットネスSent.、ホクト飯綱保養所(標高1,000m)。心と体をリフレッシュできる「場」。
デジタル教育、自然体験、企業研修、若者会議 ── 行政と住民をつなぎ、地域全体の循環をつくる。
農業も、フィットネスも、保養所も、プログラミング教育も。
目の前の課題に、自分たちの手で応え続けてきた結果がこれです。
高専を出た僕らが、
なぜ会社に「みみず」の名を冠したのか。
みみずは、暗い土の中にいる地味な生き物。
でも、土を食べ、土そのものを変えていく。
そして変わった土が、
次の命を育てる足場になる。
生物学ではこれを
「ニッチ構築」と呼びます。
環境に「適応する」のではなく、
自ら動いて「環境そのものを創る」。
与えられた条件でただ作業をこなすのか、
自らの創意工夫で、足元の土壌を変えるのか。
みみずの生き方は、
僕らが目指す「エンジニアとしての在り方」
に激しく共鳴しました。
── 華やかじゃなくていい。静かに、確実に。
この生き方こそが、僕らが心から共鳴した「WHY」であり、
人生をかけるに値する「良いテーマ」だったのです。
この授業の名前は「エンジニアリングデザイン実践」。
その意味を、まず整理させてください。
決められた手順を、
正確に再現する人。
マニュアル通りに動く。
それはそれで大切な仕事。
正解がないところに、
自分で問いを立て、
創意工夫で道をつくる人。
限られた予算、限られた時間。
その中で最大の価値を生み出す。
テーマ選びの段階から、
すでにエンジニアリングは
始まっている。
何を作るかの前に、
「なぜ」を自分で掴みにいく。
いいテーマって、
自分の技術が活かせるテーマ?
有名な会社のテーマ?
なんとなく面白そうなテーマ?
── それも大事かもしれない。
でも、エンジニアとして選ぶなら、
もうひとつ基準がある。
「なぜ、それをやるのか?」
「なんのために、その技術を用いるのか?」
そこに明確なビジョン(WHY)があること。
そして、そのビジョンに
あなたが共感できることが大事。
── タイトルでもある「WHYから始める」とは、
まさにこの基準でテーマを選ぶということです。
ANTOINE DE SAINT-EXUPÉRY
──『星の王子さま』著者
プログラミング言語、センサー、機械加工
= HOW(技術・手段)
「〇〇の開発」「〇〇のシステム化」
= WHAT(テーマ・成果物)
解決したい社会課題、創りたい未来
= WHY(ビジョン・理念)
「近赤外光センサーでAI解析するらしい。筐体設計もあるのか。技術的に面白そう。」
「元々は医療用非破壊検査の会社だ。長野の農家の負担に気づき、自作の技術を農業の救済へ横展開しようとしている。」
「とうもろこし作ったり、廃校でジムやったり、よくわからない会社だな。」
「全部『地域の豊かな土壌を作る』理念で繋がっている。みみずのように役割を全うし、他者の命を豊かにする『循環する社会』の海に向かっているんだ。」
企業のWebサイトを開いたら、製品ページ(木)よりも先に、
この4つのページを読み解いてみてください。
この会社はどんな未来を描いているのか?
なぜそのミッションを掲げたのか?
→ 企業の目指す目的地(海)の輪郭が見える。
「なぜこの会社を創ったのか?」
「どんな社会課題に憤りを感じているか?」
→ ここに企業の原体験(熱源)がある。
最初から今の製品を作っていたか?
どんな困難を乗り越えてきたか?
→ 事業の変遷に企業の信念が現れる。
どんな仲間と、
どんな未来を作りたいのか?
→ 顧客向けより仲間向けの本音が聞ける。
── もうひとつ、大事な話をさせてください。
今回、テーマごとに
予算 35,000円
があります。
これは何か?
「材料費」── つまり原価の一部です。
もしこれを「仕事」にするなら…
その成果物にいくらの値段をつけるか。
それはあなたたちが決めることです。
35,000円の材料で作ったものを
50,000円で売るのか、100,000円で売るのか。
その差額=あなた方の価値であり、
技術者が明日も生きていくための原資になります。
「材料費だけ」をコストだと思ってしまう。
作っている自分の「時間や知恵の価値」を計算に入れるのを忘れがち。
「良い技術・ハイスペック=良いもの(高く売れる)」ではない。
「自分が作りたいもの」と「客が求めているもの」のズレ。
では逆に、「とにかく売れるものがいいもの?」
── これも違う。
・技術者は「品質と高度な技術」を求める
・営業は「売りやすさ(安さ)」を求める
・経営者は「採算(利益)」を求める
この複雑なリアルの中で「自分たちはどうするか?」を
決断していくのが、技術者の本当の仕事です。
── これがなければ走る方向がわからない
── これがなければ走り続けられない
皆さんに渡される35,000円は、
企業が皆さんの可能性に賭けた投資。
この材料費に、あなた方の知恵と工夫を載せて、
どれだけの価値を生み出せるか。
それがエンジニアリングデザインであり、
社会で生きていくための基本的なルールです。
次のワークで、自分の手で調べてみてください。
企業の「あり方」を掘り下げる
20のテーマ候補から、直感で「少し気になる」企業を1つ選ぶ
選んだ企業のWebサイトを調べる。
特に ビジョン・ミッション・代表挨拶・沿革 にフォーカス。
💡 マインドセット:
あなたは学生ではなく、
その企業の熱烈なファンになったつもりで。
テーマの裏にある「WHY」を探してください
この企業は何のために?
WHY
大切にしている価値観は?
VALUE
誰を幸せにしたい?
WHO
異分野の人と「WHY」で語り合う
「私の企業は、こんな想いで
世の中を良くしようとしています」
違う人と組んで、もう一度語る。
2〜3ローテーション。
「共鳴できた瞬間」はあったか?
それはどんな「WHY」だったか?
相手の「WHY」を
最後まで聴いてから話す。
否定しない。
「それ、いいね!」と
思えるポイントを
見つけてフィードバック。
違う学科だからこそ
見える景色がある。
それが1年間の強みになる。
文化や専門が違っても、ビジョン(WHY)の部分では対話ができ、共鳴し合える。
その企業の一員になったつもりで、想いを語ってください
話すこと
「この企業は、こんな想いで
社会に向き合っています」
話さないこと
「IoTセンサーで温度を…」
「機械学習のモデルが…」
この1年間と、その先のキャリアへ
テーマの裏にある「なぜこの企業は存在するのか?」を自分の手で調べた。
技術や仕様ではなく、ビジョン(想い)で語り合い、共鳴できるポイントを探した。
違う学科の人と初めて話し、「違い」から新しい視点を得た。
4年生の皆さんは、これから
就職や進学という
大きな進路選択を迎えます。
その時 ──
「自分の技術が活かせるか」
だけで選ばないでください。
その企業の存在理由(WHY)に、
自分は心から
共感・共鳴できるか?
共鳴できる相手となら、
困難な課題にも1年間、
社会人になってからも、
情熱を持って立ち向かえる。
FROM YOUR SENPAI
── 長野高専の後輩たちへ
調査する企業(テーマ)名:
① 経営理念・ミッション・ビジョン等
※企業の根幹となるメッセージをそのまま抜き出してください
② キーワード・対象となる課題・目指していること
※気になった言葉や、企業が解決しようとしている課題を抜き出してください
その企業が目指す未来や課題に、共感できたか?
※「なぜ面白そうと感じたか」「自分事のように思えるか」
目標達成に、どんな技術・知識を使いたいか?
※これまでに学んだこと、あるいはこれから学びたい具体的なアプローチ
本日の授業の感想・フィードバック(自由記述)
※疑問に思ったこと、考えたこと、なんでも自由に書いてください
ご清聴ありがとうございました
株式会社みみずや ─ 長野県上水内郡飯綱町川上1535 いいづなコネクトWEST-108
✉️ info@mimizuya.co.jp ─ https://mimizuya.co.jp